◎発達障害について
⭐︎発達障害の分類
•知的障害(MR)、自閉症スペクトラム症(ASD)(関係の発達障害が主体で認識の発達順にアスペルガー、高機能自閉症、自閉症)、学習障害(LD)、注意欠如多動障害(ADHD)(一部の分野で認識の発達遅滞がある)
•ASDだけ、ADHDだけ、LDだけというひとは少なくオーバーラップしている。定型発達から発達障害まで連続性がある。
•生まれつき脳機能の発達に偏りがあり、生きにくさを感じている
•発達には認識の発達と関係の発達があり、相互に作用しながら発達していく
⭐︎発達障害の病因
1)外因(脳損傷)
感染、中毒、外傷、代謝、染色体異常、周産期異常、虐待。しかし、必ずしも脳損傷が原因になるとは限らない。アスペルガーや高機能自閉症は脳損傷がない場合がほとんど。
2)内因(遺伝的素因)
単独では異常を来さない、誰にでも発現しているごく普通の遺伝子がある特定の組み合わせで発現することで素因を生み出す。一定の確率で起こる(LTPを増強させる遺伝子)。
使われない神経回路の効率を下げることを可塑性というが、発達障害では情報伝達を亢進させるLTP(長期増強)が過剰になり、シナプス後膜のグルタミン酸受容体が過剰に発現している(可塑性の異常)。情報処理量が多くなり思考整理がされず集中力が続かない。
3)心因(環境要因)
環境要因は必須ではない。環境の影響を受けていない生後数ヶ月で関係の発達に障害が見られるから。ただし、同じ環境でも外因、内因をもつ者は持たない者より悪影響を受けやすい。育て方は原因ではない。
⭐︎なぜ発達障害が増えたのか?
•典型的なカナー型自閉症は減っている。アスペルガーや高機能が増加している。自然を対象にした第一次産業や物を対象にした第二次産業中心の社会ではアスペルガー的な特性は長所や才能とされたかもしれない。
•現在は人を対象とした第三次産業が就労者の7割を占め、勤勉さだけではなく高い社会性が求められ、より生きづらさを感じるケースが増えたのではないか。
⭐︎発達障害の特徴
•自閉スペクトラム症(ASD)
対人コミュニケーション障害、社会性の障害(集団に馴染めない、他者理解力に欠ける)、強いこだわり(頑固、感覚過敏→リスペリドン、コンスタン)
•知的障害がないアスペルガー、軽度知的障害がある高機能自閉症、知的障害がある自閉症に分けられる。
•注意欠如多動症(ADHD)
小児の5%、成人の2.5%
不注意優勢型、多動衝動性優勢型、混合型→コンサータ(ドパミン↑)、ストラテラ(ノルアド↑)、インチュニブ(神経伝達物質の再取り込み↑)
•学習障害(LD)
小児の5-15%、成人の4%
読字障害、書字障害、算数障害。
教育的アプローチ。ASD,ADHDを合併すればTMSが使える。
•ASD,ADHD共通症状
睡眠リズムが乱れやすい、数的感覚が苦手、計算が苦手、言語能力が低い、言い間違い、不器用、処理速度が低い、運動能力が低い
•2次障害
うつ、パニック、PTSD、対人不安、強迫性、依存性(アルコール、性、買い物、自傷、ギャンブル)
•一見集団に馴染めているように見えてもただおとなしいだけかもしれない、不注意はあるが衝動性はない、コミュニケーション能力はあるが頑固過ぎるなど一見してわかりにくい場合がある。
⭐︎発達障害の2次障害
•人格障害、パニック、難治性うつ病の中に発達障害が原因になっている場合があり従来の治療では改善しない場合がある。
•表面上社会に適応している発達障害の人が2次的にうつや身体症状で受診するケースもある。同じ強迫症状でもアスペルガーが背景にある場合は従来の行動療法が無効なこともある。
⭐︎診断、治療
•病歴、成育歴の聴取
•知能検査:WAIS(ウェイス)、WISK(ウィスク)
•脳波検査:QEEG(定量的脳波検査)
発達障害、うつ特性、不安特性、PTSD特性、パニック特性、不眠特性を判断することが可能。
•薬物療法:リスパダール、コンスタン、コンサータ、ストラテラ、インチュニブ
•SST(ソーシャルスキルトレーニング)、ペアレンタルトレーニング、環境調節。
•就労定着支援、就労移行支援
•発達障害と診断されることで障害支援枠での就職が可能、精神障害者保険福祉手帳の対象、18才未満で知的障害がある場合は療育手帳の対象。障害者年金が給付される(グレーゾーンではできない)
⭐︎グレーゾーン
•操作的診断ではASD,ADHDとは診断されない閾下ASD。医師により診断に主観が入ること、患者の体調により症状にむらがあること等から診断されないケース。
グレーゾーンは支援、治療を受けられずに社会的に孤立し、無理に仕事を続けることで抑うつ病、不安障害などメンタルリスクが高い。周囲に理解されず自分を責めてしまい、社会生活で困難を抱えやすい。
•SRSスコア上位2.5%がASD、上位10%が閾下ASD。従って、定型発達から発達障害までを連続したものと捉えて診断、治療、支援を行うことが重要。
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